今回は、ベイズ統計による線形回帰分析(Multiple Regression)に挑戦してみましょう。JASPを使えば、たった50秒で以下の分析項目を一気に実行できます!この記事では複数の要因が、ある結果とどの程度関連しているかを探索する、というシナリオでやっていきます
✅ 線形回帰分析の実行
✅ BF・事後分布の確認
✅ 多重共線性の確認(VIF)
✅ 残差プロットの描画
「JASPってなに?」という方は、こちらの記事へ。
普通(頻度論)の「線形回帰分析について知りたい」という方は、こちらの記事へ。
▼ まずはこちらのキャプチャ動画をご覧ください!(約50秒)
➡️ このように、わずか50秒で線形回帰分析の実行からグラフ作成まで一気に可能です!
※この記事はJASP バージョン0.98.1で作成されています。
▼ 重回帰分析の手順
この記事では、次の流れで進めていきます:
- データを準備する
- JASPでデータを読み込む
- ベイズ推定の「線形回帰」メニューを開く
- 目的変数と説明変数を指定する
- 係数のBFや事後分布プロット作成など必要なオプションを有効にする
- 結果を外部に出力する
▼ データの準備
分析には以下のような形式のExcelファイル、csvファイルがおすすめです。列の1行目に変数の名前が入っていて、その下にデータが続いています。なお、今回使用するデータは機械的に生成した架空のものです。現実の患者特性や実態を反映したものではないため、ご注意ください。

- 「目的変数」(FIM_disch)と「説明変数」(age,FIM_onset,mmse_onset)を列に分けて記載します。このデータでは、退院時FIM(FIM_disch)に、年齢・発症時FIM・発症時認知機能がどの程度関連しているかを検討する、という形式で進めます。
- 列名は 半角英数字で記述してください。
💡 日本語や全角文字はエラーの原因になることがあります。特にCSVファイルでは、列名が日本語だと文字化けしてしまいます。
▼ JASPでベイズ統計の線形回帰分析を実行
1,JASPを起動し、左上の「三」ボタン → 「コンピューター」からCSVファイルを開きます。

参照ボタンをクリックし、解析対象のファイルを開きます。

csvファイルの場合は以下のようなダイアログが開きます。
特別問題がなければ、Loadをクリックして進めます。
設定によってはcsvファイルのデータの区切りが「,」ではないことがあります。
その時は、適切な区切り文字を選択して、データが正しく読み込まれるようにしてください。

問題なくデータが読み込まれるとこのように表示されます。

メニューバーの「回帰」から、ベイジアンの側の「線形回帰」を選択します。

解析対象の変数を指定していきます。

交互作用項が必要な時はモデルタブで指定します。

指定できると以下のように表示されます。

▼ オプションの設定
係数のBF要約や事後分布プロットを出力するための設定をしていきます。
変数間の関連性を探索するのが目的であれば、以下の項目にチェックするのがおすすめです。
また、係数のプロットは変数の探索目的であれば、「切片の除外」にチェックを入れるのがおすすめです。切片が表示されたままだと縦軸の範囲が大きくなり、変数間の違いが分かりにくくなってしまいます。

交互作用項を入れると変数名が長くなり、プロットで変数同士が重なってしまうことがあります。グラフにポインタを載せると右下に三角形のアイコンが表示されます。これをドラッグしてグラフサイズを大きくすると、解決できます。

事後分布プロットや、回帰診断に必要なプロットの出力を指定していきます。

事前分布を変更するには詳細タブで設定を行います。
偏回帰係数の事前分布を変更するにはJZSの入力欄に、任意の数値を入力します。
※入力後エンターを押さないとプロットが更新されないことがあります。数値を入れたらキーボードのenterキーで確定しましょう。

▼ 結果の外部出力方法
表が欲しい場合
- 表の上にあるタイトルをクリック →「コピー」
- ExcelやPowerPointに貼り付けてそのまま編集・保存

グラフが欲しい時
- 表の上にあるタイトルをクリック →「コピー」
- ExcelやPowerPointに貼り付けてそのまま編集・保存

※グラフのタイトルをクリック →「画像を名前を付けて保存」で好きなフォルダに保存することもできます。
結果全体をまとめてほしい時
- 左側メニューの「結果」タブをクリック
- 「結果のエクスポート」→ PDFかhtmlで保存可能

学会・ジャーナルでの記載例
この節では実際に学会やジャーナルで発表をする場合の記載例について紹介します。ベイズ回帰分析の結果を論文に書くとき、頻度論の重回帰分析と同じ感覚で書いてしまうと、査読で「BFの解釈が誤っている」「モデル選択の手続きが不透明」といった指摘を受けやすくなります。
t検定の記事でも紹介した通り、現在世界基準で信頼できるガイドラインは、アメリカ心理学会(APA)のJARSガイドライン、そしてNature Human Behaviourで発表された『BARG(ベイズ分析報告ガイドライン)』です。※2026年7月現在
今回は、この国際基準を参考にした『ベイズ重回帰分析』の記載テンプレート(日本語・英語)を用意しました。ご自身の解析結果の数値に置き換えてご利用ください。
原典を参照したい方用にリンクを置いておきます。
APA STYLE
アメリカ心理学会が出している論文の書式のガイドラインです。以下のリンクはベイズ推定に関するチェックシートへの直リンクです。
Nature Human Behaviour(Natureの姉妹紙)のBayesian Analysis Reporting Guidelines(BARG)
ベイズ統計の大家であるJohn K. Kruschkeが作成したベイズ推定の報告についてのガイドラインです。下のリンクはチェックリストへの直リンクです。
日本語版(英語版は下の方にあります。)
方法(Methods)
退院時FIM(FIM_discharge)に関連する要因を検討するため、年齢(age)・身長(height)・発症時FIM(FIM_onset)・発症時MMSE(mmse_onset)を説明変数としたベイズ重回帰分析を行った。分析にはJASP(Version 〇〇)を使用した。各説明変数の事前分布には、JASPのデフォルト設定であるJZS(Jeffreys-Zellner-Siow)事前分布(r scale = 0.354)を割り当てた[Step 1-C]。モデル選択には全ての説明変数の組み合わせを網羅するモデル比較(すべてのモデルを含める)を実施し、事後モデル確率に基づいて各説明変数の包含の証拠(inclusion Bayes factor: BF_inclusion)をベイズ・モデル平均法(Bayesian Model Averaging: BMA)により算出した[Step 2-D]。回帰係数の事後分布の要約には、モデル平均された事後中央値と95%等裾可信区間(95% Equal-Tailed Interval: ETI)を用いた。
結果(Results)(説明変数に強い証拠が認められた場合)
ベイズ・モデル平均法による重回帰分析の結果、発症時FIM(FIM_onset)を含むモデルは、含まないモデルと比較して極めて強い証拠を示した(BF_inclusion = ○○)[Step 3-C]。発症時FIMのモデル平均された回帰係数の事後中央値は ○○(95% ETI:○○~○○)であり、区間が0をまたいでいないことから、退院時FIMとの関連が支持された。一方、年齢(BF_inclusion = ○○)、身長(BF_inclusion = ○○)、発症時MMSE(BF_inclusion = ○○)については、いずれもアンカーとなる証拠は弱く、これらの変数を含める根拠は乏しいと考えられた[Step 3-B]。
また、事前分布のスケール値を変化させた感度分析(Robustness Check)を行った結果、発症時FIMのBF_inclusionは○○~○○の範囲を推移し、事前分布の設定にかかわらず頑健な結果であることが確認された[Step 5-C]。
結果(Results)(明確な証拠が得られなかった場合)
ベイズ・モデル平均法による重回帰分析の結果、いずれの説明変数についても包含を支持する明確な証拠は得られなかった(すべての説明変数でBF_inclusion < ○○)。最も証拠が強かった発症時FIM(BF_inclusion = ○○)についても、その回帰係数の事後中央値は ○○(95% ETI:○○~○○)であり、区間が0をまたいでいたことから、頑健な関連があるとは言えない結果であった。
※BF_inclusionは「その説明変数を含むモデル群」と「含まないモデル群」の事後オッズを比較した指標であり、単変数のp値とは意味が異なります。一つの変数のBF_inclusionは、他の説明変数の組み合わせ全体を通した「平均的な証拠の強さ」である点に注意してください。
※交絡因子の調整方法や対象者の選定基準についても、STROBE声明に沿って別途「対象と方法」セクションに明記することが推奨されます。この点は交絡因子とは?の記事もあわせてご参照ください。
英語版(折りたたまれています。以下をクリックして開いてください。)
Methods
To examine factors associated with FIM score at discharge (FIM_discharge), a Bayesian multiple regression analysis was conducted with age, height, FIM score at onset (FIM_onset), and MMSE score at onset (mmse_onset) as explanatory variables. The analysis was performed using JASP (Version 〇〇). A default JZS (Jeffreys-Zellner-Siow) prior (r scale = 0.354) was assigned to each explanatory variable. Model comparison was conducted across all possible combinations of explanatory variables, and inclusion Bayes factors (BF_inclusion) for each variable were calculated via Bayesian Model Averaging (BMA) based on the posterior model probabilities. Posterior distributions of the regression coefficients were summarized using the model-averaged posterior median and the 95% Equal-Tailed Interval (ETI).
Results (説明変数に強い証拠が認められた場合)
The Bayesian model averaging analysis provided extremely strong evidence that FIM score at onset should be included in the model (BF_inclusion = ○○). The model-averaged posterior median of the regression coefficient for FIM at onset was ○○ (95% ETI: ○○ to ○○), and since the interval did not include zero, this supported an association with FIM score at discharge. In contrast, age (BF_inclusion = ○○), height (BF_inclusion = ○○), and MMSE at onset (BF_inclusion = ○○) all showed weak evidence for inclusion, suggesting limited justification for retaining these variables.
A sensitivity analysis (robustness check) varying the prior scale showed that the BF_inclusion for FIM at onset ranged from ○○ to ○○, confirming that this result was robust regardless of the prior specification.
Results (明確な証拠が得られなかった場合)
The Bayesian model averaging analysis did not provide clear evidence for including any of the explanatory variables (all BF_inclusion < ○○). Even for FIM at onset, which showed the strongest evidence (BF_inclusion = ○○), the posterior median of the regression coefficient was ○○ (95% ETI: ○○ to ○○), and since the interval included zero, a robust association could not be confirmed.
補足(多重共線性・VIFについて)
ベイズ統計の線形回帰分析でも、頻度論の回帰分析と同じく多重共線性の問題が生じます。しかし現状のJASPでは、ベイズ線形回帰メニューにVIFを出力する機能がありません。(2026年7月現在)
多重共線性が強いと、回帰係数の事後分布が不必要に広がったり、BF_inclusionの解釈が不安定になったりする可能性があります。そのため、解析結果を信頼性をもって伝えるには、別途VIFなどの指標で確認しておく必要があります。
VIFは目的変数に依存しない指標のため、同じ説明変数セットであれば、頻度論(伝統的/古典的)の線形回帰メニューから出力した値をそのまま併記して問題ありません。JASPを使うのであれば、この方法が一番手軽かと思います。
JASPでのVIF出力の実際のやり方はこちらで紹介しています。
まとめ
JASPを使えば、プログラミング知識不要で重回帰分析に必要な指標をすべて一括で出力できます。
初めての方でも、60秒で回帰分析と診断が完了するシンプルな操作感をぜひ体験してみてください!
🔍 うまくいかない場合は以下を確認:
- ファイル名・列名が 半角英数字になっているか?
- データに 欠損値や異常値が含まれていないか?
重回帰分析に関連がある記事
多重共線性の悪影響
多重共線性の回避方法5選
JASPでのロジスティック回帰分析のやり方(頻度論)
JASPでの主成分分析のやり方

【著者について】
理学療法士(回復期リハビリ病棟 12年以上)
統計検定2級・Python 3エンジニア認定(データ分析)取得。
臨床現場でのデータ活用を目的に統計・機械学習を独学。
FIM退院予測モデルを個人で設計・実装(スタッキングアンサンブル+SHAP)。
強化学習(MuJoCo/Walker2d)や高位頸髄損傷患者向けデバイスの
自作など、臨床課題を技術で解くことに関心を持つ。
医療職向けに統計・データサイエンスをわかりやすく解説するブログ
「Curiosity Creates」を運営中。



コメント