この記事の内容
この記事では、無料の統計ソフト「JASP」を使用して、ベイズ推定による相関分析を実行し、ベイズファクター(BF)や事前・事後分布プロット、BFの頑健性プロット、記述統計までを一気に行う方法を紹介します。
また、検定結果を外部出力する方法や、学会・ジャーナルでの記載例もあわせて紹介します。
また、最新版のJASPのベイズ推定による相関分析は、日本語訳や略語の表記に注意が必要な場所があるため、それも併せて紹介します。(2026年7月19日現在)
※この記事では JASP バージョン0.98.1を使用しています。
まずはこちらのキャプチャ動画で流れを確認(約50秒)。
このようにたった数十秒でベイズ推定による相関分析からグラフ描画まで一気に行えます。
では具体的なやり方を見ていきます。
ベイズ推定での相関分析の実際のやり方
全体の流れ
データの準備
データの読み込み
データ列を指定して相関分析の実行
各種プロットと基礎統計量の描画
データの準備
まず、検定に使用するデータを準備してください。
Excelなどで作成し、CSVまたはExcel形式で保存するのが簡単です。
用意するのは下のような形式のデータです。

検定するには、対応するデータが横並びになったデータセットが必要です。
【注意点】
JASPは半角英数で安定して動作するようになっています。日本語や全角英数字は、文字化けやエラーの原因になります。データシートは半角英数で作成してください。
列名はX,Y,Zにしましたが、好きな列名を設定することが出来ます。あとで見たときに分かりやすい名前にしてください。
なお、JASPでのベイズ統計での相関分析は、線形の相関関係を想定しています。ベイズ統計だからといって、非線形関係の相関を検出できるわけではありません。
線形・非線形ってなに?
と思った方はこちらの記事もご覧ください。
データの読み込み
JASPを起動するとこんな画面からスタートします。
左上の「三」メニューをクリックします。

「開く」→ 「コンピュータ」→「参照」からファイルを選んで読み込みます。

csvファイルの場合は以下のような画面が表示されます。問題なく読み込めていれば、「Load」ボタンを押しましょう。csvは大抵「,」でデータが区切られていますが、「;」や「|」などのほかの記号で区切られていることもあります。その場合は、上部のボタンから適切な区切り文字を選択して、ファイルを開いてください。

データが正常に読み込めたか確認します。

検定の実行
上部メニューの「回帰」メニューからベイジアンの「相関」を選択します。伝統的の側の相関を選択すると頻度論の相関分析になってしまいます。

次に変数を右枠内へドラッグ&ドロップします。
計算が終わり次第、右側の出力エリアにBF(ベイズファクター)が表示されます。

検定自体はこれで終了です。
パソコンの性能によっては結果が表示されるまで少し時間がかかるかもしれません。(数十秒~数分)
次にプロットや基礎統計量の出力設定に移ります。
設定エリアのメニューで、必要に応じて以下のチェックボックスにチェックを入れてください。
・分布のグラフが必要であれば「事前分布と事後分布」
・事前分布についての頑健性についてのグラフが必要であれば「ベイズファクターの頑健性チェック」
・信用区間が必要であれば「信用区間」
・データの線形性の確認が必要であれば「Linearity test」
・基礎統計量の表が必要であれば左下の「記述統計量」
・相関行列が必要であれば「相関行列」(必要に応じて「変数の密度」「H1の下の事後分布」もチェック)

対立仮説と事前分布の設定について
対立仮説については初期設定にしておくのが無難です。初期設定では、正の相関・負の相関のどちらの可能性も考慮するようになっています。
理論上データが正の相関(または負の相関)のどちらかにしかなり得ない場合は、以下のどちらかを選択します。
・正の相関
・負の相関
先行研究の情報を使って事前分布をカスタマイズする機能もあります。これには決まった手順があるわけではなく、分野やジャーナルによって扱いが異なります。実際、専門家に聞き取り調査を行っても、専門家間で事前分布の見解が割れることが報告されており、今のところ発展途上のトピックと言えます。(2026年7月現在)
この記事ではデフォルト設定(拡張ベータ事前分布の幅 1)で解説しています。
もし変更の必要がある場合は、拡張ベータ事前分布の幅を手動で修正してください。

各ペアのプロットの出力と注意点
事前・事後分布のプロットや頑健性プロットは、どの変数のペアで出力するか指定する必要があります。
必要なデータのペアを右枠内へ移動しましょう。横に並んだペアで、プロットが出力されます。

事前・事後分布のプロットでは95%信用区間が95%CIと記載されています。
ここは注意が必要です。

ベイズ推定で使用される95%信用区間は95% Credible Interval です。
一方古典的統計手法における95%信頼区間は95% Confidence Intervalです。
信用区間も信頼区間も頭文字だけ取れば95%CIとなり、区別がつきません。
そのため、ベイズ統計で使用される信用区間を報告するときは、95%CrI(または95%BCI)と記載するのが一般的です。グラフを使用する場合は、修正してから掲載するようにしてください。
検定結果やグラフの外部出力
検定結果やグラフは、簡単に画像やPDFとして保存できます。
論文・レポート・プレゼン資料への活用もスムーズです。
表を外部出力する場合
表のタイトルをクリック → 「コピー」を選択しPowerPointやExcelに貼り付けます。貼り付けた後に編集もできます。

グラフを外部出力する場合
グラフのタイトルをクリック → 「コピー」を選択してPowerPointなどに張り付けてください。
メニューから「名前を付けて画像を保存」を選択して、グラフを好きなフォルダに保存することも可能です。

結果をまとめて外部出力する場合
左の「結果」をクリックします。
メニューから「結果のエクスポート」を選び、好きなフォルダに保存します。
保存形式はPDFとHTML形式が選択できます。

学会やジャーナルでの記載例
この節では実際に学会やジャーナルで発表をする場合の記載例について紹介します。ベイズ統計の結果を論文に書くとき、自己流で書くと査読で落とされる原因になります。
現在、世界基準で信頼できるガイドラインは、アメリカ心理学会(APA)のJARSガイドライン、そして2021年に世界的権威のあるNature誌(Nature Human Behaviour)で発表された『BARG(ベイズ分析報告ガイドライン)』です。※2026年7月現在
今回は、この国際基準を参考にした『ベイズ推定の対応のあるt 検定』の記載テンプレート(日本語・英語)を用意しました。ご自身の解析結果の数値に置き換えてご利用ください。
原典を参照したい方用にリンクを置いておきます。
APA STYLE
アメリカ心理学会が出している論文の書式のガイドラインです。以下のリンクはベイズ推定に関するチェックシートへの直リンクです。
Nature Human Behaviour(Natureの姉妹紙)のBayesian Analysis Reporting Guidelines(BARG)
ベイズ統計の大家であるJohn K. Kruschkeが作成したベイズ推定の報告についてのガイドラインです。下のリンクはチェックリストへの直リンクです。
日本語版
方法(Methods)
2変数間の関連を検証するため、ベイズ相関分析(Bayesian Pearson correlation)を行った。分析にはJASP(Version 〇〇)を使用し、計算には数値積分による正確な近似を用いた(MCMCサンプリングは不使用)[Step 2-D]。相関係数(ρ)の事前分布には、JASPのデフォルト設定であるStretched beta分布(width = 1、すなわち−1〜1の一様分布)を割り当てた[Step 1-C]。
結果(Results)(関連があることが支持された場合)
ベイズ相関分析の結果、対立仮説(2変数間に相関がある)を支持する極めて強い証拠が得られた(BF₁₀ = ○○)[Step 3-C]。相関係数の事後中央値は r = ○○ であり、95%等裾可信区間(95% Equal-Tailed Interval: ETI)は ○○~○○ であった[Step 3-B]。
また、事前分布の幅(width)を変化させた感度分析(Robustness Check)を行った結果、BF₁₀は○○~○○の範囲を推移し、事前分布の設定にかかわらず対立仮説を強く支持するという結論は頑健であることが確認された[Step 5-C]。
※95%ETIは分布が左右対称である事を明示的に記載したものです。左右非対称な事後分布の場合はHDI(Highest Density Interval)の使用も検討してください。単に信用区間を記載する場合は「95%CrI」と記載します。
結果(Results)の記載例(関連がないことが支持された場合)
ベイズ相関分析の結果、帰無仮説(2変数間に相関がない)を支持する中等度の証拠が得られた(BF₀₁ = ○○、または BF₁₀ = ○○)。相関係数の事後中央値は r = ○○(95% ETI:○○~○○)であり、2変数間に明確な相関関係は認められなかった。
英語版(折りたたまれています。以下をクリックして開いてください。)
Methods
To examine the association between two variables, a Bayesian Pearson correlation analysis was performed using JASP (Version 〇〇). Numerical integration was used for posterior computation (no MCMC sampling was performed). A default stretched beta prior (width = 1, i.e., a uniform distribution over −1 to 1) was specified for the correlation coefficient (ρ).
Results(関連があることが支持された場合)
The Bayesian correlation analysis provided strong evidence in favor of the alternative hypothesis (BF₁₀ = ○○). The posterior median of Pearson’s r was ○○, with a 95% Equal-Tailed Interval (ETI) ranging from ○○ to ○○.
Results(関連がないことが支持された場合)
The Bayesian correlation analysis provided moderate evidence in favor of the null hypothesis over the alternative hypothesis (BF₀₁ = ○○, or BF₁₀ = ○○). The posterior median of Pearson’s r was ○○, with a 95% Equal-Tailed Interval (ETI) ranging from ○○ to ○○, suggesting no substantial association between the two variables.
まとめ
この記事では、JASPを使ったベイズ推定による相関分析について、データの準備から検定の実行、各種プロットの出力、そして学会・ジャーナルでの記載例までを一気に解説しました。
JASPを使えば、わずか数十秒の操作でベイズファクター(BF)の算出はもちろん、相関行列、事前・事後分布プロット、頑健性チェックまでまとめて出力できます。従来の頻度論的な相関分析と比べても、操作の手間はほとんど変わりません。
一方で、結果を報告・記載する際にはいくつか注意すべきポイントがありました。
・信用区間(CrI)と信頼区間(CI)の混同に注意する:どちらも「95%CI」と略されがちですが、ベイズ推定の文脈では95%CrI(またはBCI)と明記するのが望ましい
・BARGやAPA STYLEなど国際的なガイドラインに沿って報告する:自己流の記載は査読で指摘を受ける原因になりうる
・頑健性チェックを併記することで、事前分布の設定に依存しない結論であることを示せる
なお、事前分布のカスタマイズについては、まだ分野横断的な統一見解がなく発展途上のトピックです。今回はJASPのデフォルト設定(Stretched beta分布 width = 1)を前提に解説しましたが、情報的事前分布を用いる場合は、今後の記事で別途扱う予定です。
ベイズ統計は「差がないことの証明」ができる点が大きな強みです。臨床研究や実践の現場でも、ぜひ活用してみてください。
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【著者について】
理学療法士(回復期リハビリ病棟 12年以上)
統計検定2級・Python 3エンジニア認定(データ分析)取得。
臨床現場でのデータ活用を目的に統計・機械学習を独学。
FIM退院予測モデルを個人で設計・実装(スタッキングアンサンブル+SHAP)。
強化学習(MuJoCo/Walker2d)や高位頸髄損傷患者向けデバイスの
自作など、臨床課題を技術で解くことに関心を持つ。
医療職向けに統計・データサイエンスをわかりやすく解説するブログ
「Curiosity Creates」を運営中。


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