名前はよく聞く「ディープラーニング」って何?
最近「AIが診断をサポートする」とか「ディープラーニングで病気の予測精度が上がった」なんて話を耳にすること、増えていませんか?
でも正直、「ディープラーニングってよく聞くけど、実際どうすごいの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。
今回は、医療従事者の方でも読みやすいように、ディープラーニングについて広く・浅く・ざっくりと紹介します。難しい数式は出てきませんので、どうぞお気軽にお付き合いください。
人間の脳をまねた「学習」のしくみ
ディープラーニングとは、簡単に言うと「大量のデータから、自動で特徴やパターンを学習する」技術です。
その中核にあるのが「ニューラルネットワーク」というしくみで、これは人間の脳の神経細胞(ニューロン)の働きをモデルにしたものです。
具体的なしくみを感覚的に見られるサイトとしておすすめなのが、こちらのサイトです。
👉 TensorFlow Playground

ここでは、用意されたアイコンをあちこちクリックして、層の数を変えたり、非線形なパターンをどこまで学習できるかを視覚的に体験できます。「数式や理論がわからなくても動かせる」のが魅力で、私も初めて触ったときは、「お、これ面白い!」と思いました。
医療での応用例はいろいろあります
では、実際の医療現場ではどう使われているのでしょうか?
いくつかの例をご紹介します:
- がんなどの画像診断:CTやMRI画像を読み取って病変を検出
- 顔画像から血圧や心拍を推定:カメラだけでバイタルをモニタリング
- 新薬開発:分子構造のパターンから有効性を予測
リハビリ分野でも以下のような例があります:
- 2次元の動画から3次元の姿勢を推定:昔は数百万円の専用機材(VICON等)が必要でしたがカメラ一つで対応可能になりました。
- 入院時のFIMスコアから退院時のスコアを予測:従来の重回帰モデルよりも高精度に予測できるようです。
どれも、大量のデータをうまく学習させれば、実際に臨床で役立つツールになり得ます。リハビリ分野で一番身近なのは、退院時FIMや高次脳機能のスコア予測かと思います。
重回帰分析との違いは?
「でも、今までも統計を使って予測とかしてたんじゃない?」と思いますよね。
たとえば重回帰分析は、説明変数(例:年齢や初期FIMスコア)と目的変数(例:退院時FIMスコア)の間に直線的な関係があると仮定して、予測モデルを作ります。
このやり方は「なぜこうなるのか」が説明しやすい=解釈性が高いという強みがあります。
ただし、関係が直線関係ではない(=非線形)と、うまく予測できないこともあります。ちなみに、関係が直線関係ではない、とは以下のような状況です。下の散布図はデータが山なりになっており、直線関係ではないことが分かります。従来の重回帰モデルでは、このような関係性のあるデータはうまく扱えませんでした。

一方ディープラーニングは、非線形な関係を柔軟に学習できるので、複雑な状況でも高い精度が出せることがあります。上記のような関係性があっても、高い精度で予測が出来ます。
そのかわり、「なぜそういう予測になったのか」が説明しにくく、ブラックボックスになりがちという弱点もあります。
ディープラーニングと回帰分析の違いについてもう少し知りたい、という方はこちらの記事で具体的な違いを紹介しています。
ディープラーニングは万能じゃない
ここまで聞くと「じゃあ全部ディープラーニングでいいじゃん」と思うかもしれませんが、話はそう単純ではありません。
- 解釈性を重視したい場面(研究、政策、説明責任が必要なケース)
- データ量が少ない場面
- シンプルな関係しかない場面
上記のようなケースでは、重回帰分析などの統計モデルのほうが適していることも多いのです。
また、「AI」という言葉から、まるで人間のように状況を判断して、最適な対応方法まで提案してくれる――そんな“人工知能”をイメージされる方もいると思います。
でも実際には、ディープラーニングを含むAIの多くは、あくまで大量のデータからパターンを見つけて“数字として予測”をしてくれる道具であり、人間のように「考えて」「理解して」行動を決めているわけではありません。
つまり、「数字を使ってうまく予測はできるけれど、“どう介入するか”まで決めてくれるわけではない」ということです。ディープラーニングは便利な道具ですが、最終的にはまだまだ人間が判断する必要があります。
今回はディープラーニングについてざっくりと紹介しました。
今後の記事では、
- 実際にディープラーニングと回帰分析で予測モデルを作ったとき、どう違うのか?
- ざっくりした使い方
などもご紹介していきたいと思います。
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